その他

Xatafi-Cyberdark賞一覧

スペインでFT・SF・ホラーのジャンル啓蒙のために設立された同賞は、昨年で4回目を迎えた。対象となるのは08年の作品。ネビュラや日本SF大賞のような選考委員制の賞である。以前、Twitterではちらっと書いたのだが詳しく調べたので貼っておく。 原語…

山尾悠子『歪み真珠』(国書刊行会)

(メモ:後で消すかも) 15篇がひっそりと収まっている掌篇集。うち、既にどこかで発表されたものは4篇、残りが初出である。 読み終えて、ハギレの束という印象を受けた。これは決して貶し文句ではない。 娼館であるとか、足であるとか、本書の端々で読者…

ウラジーミル・ソローキン『青脂』(早稲田文学)

3分の1*1のみが早稲田文学3号に訳載された、伝説の珍作である。せっかくなので紹介記事を書いてみた。ネタバレなし。 時は21世紀も後半。永久機関のような炉に必要な20キログラムの『青脂』を採るため、遺伝子研-18に科学者と軍人が集められる。語り手…

この本が変だ!(2010第一回)

例によってブックマークが増えすぎたので、メモがわりに最近ちと気になった英語の小説を挙げておく。あらすじは出版社やAmazonのものとレビューを参考に書いているので、誤りが含まれている可能性あり。掲載順は無秩序。 D. C. Pierson “The Boy Who Couldn'…

Michal Ajvaz“The Other City”6章

→前回 The Other City (Eastern European Literature)作者: Michal Ajvaz,Gerald Turner出版社/メーカー: Dalkey Archive Pr発売日: 2009/06/11メディア: ペーパーバック購入: 4人 クリック: 26回この商品を含むブログ (3件) を見る 他の本を読む合間にちび…

ウラジーミル・ソローキン『青脂』を目前にして

→未読の人むけに紹介を書いたよ(10/2/18) ロシア本国で昨年出たバージョンの『青脂』表紙。かわいい。 もうすぐ発売される『早稲田文学』3号はおよそ半分がソローキン『青脂』の翻訳であるらしい(それでも全体の三分の一だとか) おそるべきその内容はこ…

太朗想史郎『トギオ』(2010, 宝島社)

【どんな本?】 第8回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞したピカレスクSF。 『快楽的・TOGIO・生存権』を受賞時には『東暁記』に改題されて発表され、発売時にはさらに『トギオ』に改題されたようだ。帯には「ブレードランナー」の独創的近未来…

パジェット・パウエル“The Interrogative Mood: A Novel?”(2009)

パジェット・パウエルはアメリカ南部の作家。宮脇孝雄氏が手がけた『エディスト物語』のほか、短篇2篇の翻訳があるそうだ。『地獄のコウモリ軍団』 (新潮クレスト・ブックス) でお馴染みのバリー・ハナに言わせれば「全米でも5本の指に入る作家」だという…

本をお供に行きたいカフェ

目覚まし時計をかけずに寝て起きたら午後2時だった。このままではあんまりな一日なので、気になっていた店をはしごすることに決める。夜行性なもので、夜更けにちょっと読書したり、書き物をするカフェバーを開拓しようとは前から考えていたのだ。 連休中は…

Michal Ajvaz “The Other City” (2009, Dalkey Archive)

シュールリアリズム、マジックリアリズムなのかも不明な、チェコ文学作品の英訳。 著者の名はどう読めばいいのか。まず、そこでつまづく。 本書と私の出会いは、Amazon.comの2009年SF・FTトップ10だった。一体だれが選んでいるのやら、Amazonは毎年、よ…

サラ・エアー&ラー・ペイジ編 “The New Uncanny”

英国Comma Press*1の本を2冊、Book Depositoryでポチってみた。 2008年度シャーリイ・ジャクスン賞アンソロジー部門受賞作品。Uncannyは「不気味なもの」の意で、フロイトの論で使われた言葉heimlichの英訳だそう。精巧な人形に対する違和感を表す「不気味…

ジョージ・ソーンダーズ 岸本佐知子訳「シュワルツさんのために」(群像09年10月号)

〈変愛小説集〉第2期の9作目には、2002年に短編集『パストラリア』*1(角川書店, 2002)が邦訳されたジョージ・ソーンダーズが登場だ。浅倉久志氏による翻訳があるこの作家は、私の記憶が確かであれば、都甲幸治氏がプッシュする一人でもあるはずだ。掲載…

09'春 異色・奇想ミステリ新刊

今年出た、ファンタジーやホラーとミステリの間をふらふらしてる系の小説をいくつかご紹介。 本命は、ケリー・リンク夫妻の小出版社スモール・ビア・プレスが初めて雇い入れたバイト*1という出自のジェディダイア・ベリー“The Manual of Deteciton”(2009)な…

マーガレット・アトウッド“Lusus Naturae”

これはほんの数ページの作品なのに、モンスター性というものの旨みが凝縮されている。謎の奇病なのか、ある女性の肌は毛深くなり、目は黄色に、爪は真紅に。ついに牙まで生えてしまう。彼女の口から自身の深い孤独が語られるだけの物語と言ってしまえばそれ…

カレン・マリー・モニング『妖しき悪魔の抱擁』ヴィレッジブックス(2009) 

柿沼瑛子訳の本を読むのなんて久しぶりだ。いや、柿沼訳だから懐かしんで手に取ったんだけど。妖しき悪魔の抱擁 (ヴィレッジブックス)作者: カレン・マリー・モニング,柿沼瑛子出版社/メーカー: ヴィレッジブックス発売日: 2009/07/18メディア: ペーパーバッ…