サラ・エアー&ラー・ペイジ編 “The New Uncanny”

 英国Comma Press*1の本を2冊、Book Depositoryでポチってみた。
 2008年度シャーリイ・ジャクスン賞アンソロジー部門受賞作品。Uncannyは「不気味なもの」の意で、フロイトの論で使われた言葉heimlichの英訳だそう。精巧な人形に対する違和感を表す「不気味の谷現象」はこの語から来ているようだ。ふと異常もないものの不気味さに、違和感に気づいてしまう――そんな感覚をテーマにしたのが本書である。
 英国にはすでに作家パトリック・マグラアらが編集したアンソロジー『幻想展覧会 ニュー・ゴシック短篇集』*2福武書店, 1992)がある。あの本も妙な文学好きを誘引する作家が揃った本だった。この2冊、テーマの近似だけではなく、ジャンル小説寄りの作家が収録されているところも似ていると思うのだが比較・言及している感想が見つからず、実際に読んで自分の目で確かめることにした。見せてもらおうか、英国紳士たちの不気味力を!(なんのこっちゃ)
 収録作家には新人や、邦訳のないブッカー賞候補なんかもおり、日本人がパッと見てわかるレベルの大御所はA.S.バイヤット、ハニフ・クレイシ、ラムジー・キャンベル、クリストファー・プリーストくらいだろうか。日本では一緒に名前が載るアンソロジーを見つけることがなかなか無さそうな組み合わせだ。なお、日本Amazonで買えるのは北米版。

The New Uncanny: Tales of Unease

The New Uncanny: Tales of Unease

*1:なんと文化振興を目標とした非営利出版社。

*2:原題:The New Gothic: A Collection of Contemporary Gothic Fiction, 1991. →『翻訳作品集成』様のサイトより:収録作一覧