中国の翻訳SF業界がここ1年間で劇的に変動した。大きな出来事は4つ。 1.賞ができた。ヒューゴーや星雲にあたる「星空賞」が。しかも翻訳や英米SF紹介をやっている人たちが中核にいるので、はなから翻訳小説部門がある。 2.月刊ウェブジン『新幻界…
今日は昼から午後9時まで、自宅→下北沢→吉祥寺→高円寺→帰宅と延々散歩していた。もはや散歩というレベルではない。西部古書会館の古本市は今回も見に行かなかった。読む本は十分貯めこんでいる。 ・オープン後はじめて吉祥寺アトレに入った。お洒落雑貨店の…
柴田元幸氏の講演@早大をざっとレポートする。 柴田氏の出演なさるイベントを観るのはこれで2度目。私は決して熱心なファンというわけではないが、じっくり翻訳/英文学の話を拝聴する機会などなかなかないので思わず馳せ参じてしまった。会場の入りはMA…
SF・FT界で、09年もっとも脚光を浴びた小説といっても差し支えないだろう。スコット・ウェスターフェルドが表紙に寄せた言葉は、 軽快な調子と壮大さを併せ持ち、すばらしく書きこまれたスチームパンク・ゾンビ・飛行艇アドベンチャー。 である。これで…
だいぶサボっていた。ジャンル入り乱れた怪奇・幻想小説レビューはid:granitで書くことにした。 こちらではもうちょっとエンターテイメント性がはっきりした小説を取り上げるつもりである。もしくはレポ類とか、本を読む前に紹介する場合とか、そういう雑多…
スペインでFT・SF・ホラーのジャンル啓蒙のために設立された同賞は、昨年で4回目を迎えた。対象となるのは08年の作品。ネビュラや日本SF大賞のような選考委員制の賞である。以前、Twitterではちらっと書いたのだが詳しく調べたので貼っておく。 原語…
ユージイ・フォスター“Sinner, Baker, Fabulist, Priest; Red Mask, Black Mask, Gentleman, Beast” ネビュラ賞候補でもある作品。『SFマガジン』の「マガジン・レビュー」欄では川口晃太郎氏が「罪人、麺麭職人、偽善者、司祭:赤い仮面、黒い仮面、紳士と野獣…
まず3篇読む。完全にネタバレのため、注意。候補作全リストやネットで読めるものへのリンクはこちら。 キム・レイキン=スミス“Johnnie and Emmie-Lou Get Married” 敵対する走り屋チームに属しながら愛し合ったジョニーとエミー・ルウが、愛の成就のために…
明らかに頭のスペックが出力に追いついていない。歯がゆい。 なんとなく頭の中で方向性が繋がっているので、自宅の壁に貼ってあるものから下記を紹介。18〜19世紀に妄想された気球? それから初台オペラシティでの鴻池朋子展で買い占めた絵葉書。すべて書籍…
(メモ:後で消すかも) 15篇がひっそりと収まっている掌篇集。うち、既にどこかで発表されたものは4篇、残りが初出である。 読み終えて、ハギレの束という印象を受けた。これは決して貶し文句ではない。 娼館であるとか、足であるとか、本書の端々で読者…
ネットで公開されているもののみ、今夜ざっと読了。もう完全に内容を解説しているので、ネタバレを気にしない人のみご覧ください。すごい適当なレビュー。
3分の1*1のみが早稲田文学3号に訳載された、伝説の珍作である。せっかくなので紹介記事を書いてみた。ネタバレなし。 時は21世紀も後半。永久機関のような炉に必要な20キログラムの『青脂』を採るため、遺伝子研-18に科学者と軍人が集められる。語り手…
前に紹介した本の感想を書く。いつも以上にレビューのクオリティが低いのは、きっと残念賞だったから。 トルコの、あるミステリシリーズが08年末から続けて英訳されている。著者はメフメット・ムラート・ソマー*1(Mehmet Murat Somer, 1959-)。現地では2001…
ひさびさの更新。昨日はなんとなく、以前に英国幻想文学大賞の短篇部門にノミネートしていた Simon Strantzasの"Pinholes in Black Muslin"を読んだ。初出はThe Second Humdrumming Book of Horror Stories(2008)で、Readerconなどで販売されたTUNDRA: THR…
例によってブックマークが増えすぎたので、メモがわりに最近ちと気になった英語の小説を挙げておく。あらすじは出版社やAmazonのものとレビューを参考に書いているので、誤りが含まれている可能性あり。掲載順は無秩序。 D. C. Pierson “The Boy Who Couldn'…
→前回 The Other City (Eastern European Literature)作者: Michal Ajvaz,Gerald Turner出版社/メーカー: Dalkey Archive Pr発売日: 2009/06/11メディア: ペーパーバック購入: 4人 クリック: 26回この商品を含むブログ (3件) を見る 他の本を読む合間にちび…
→未読の人むけに紹介を書いたよ(10/2/18) ロシア本国で昨年出たバージョンの『青脂』表紙。かわいい。 もうすぐ発売される『早稲田文学』3号はおよそ半分がソローキン『青脂』の翻訳であるらしい(それでも全体の三分の一だとか) おそるべきその内容はこ…
【どんな本?】 第8回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞したピカレスクSF。 『快楽的・TOGIO・生存権』を受賞時には『東暁記』に改題されて発表され、発売時にはさらに『トギオ』に改題されたようだ。帯には「ブレードランナー」の独創的近未来…
パジェット・パウエルはアメリカ南部の作家。宮脇孝雄氏が手がけた『エディスト物語』のほか、短篇2篇の翻訳があるそうだ。『地獄のコウモリ軍団』 (新潮クレスト・ブックス) でお馴染みのバリー・ハナに言わせれば「全米でも5本の指に入る作家」だという…
この2月に第2巻“Death Watch”*1が出るので応援のため、昨年のレビューを少し改稿して再掲する。このブログに載せるのは初めて。 2006年度英国推理作家協会・図書館賞*2を射止めた期待の新鋭が描く、雪密室×人間ドラマ!? イギリス南東部を舞台にした警察…
目覚まし時計をかけずに寝て起きたら午後2時だった。このままではあんまりな一日なので、気になっていた店をはしごすることに決める。夜行性なもので、夜更けにちょっと読書したり、書き物をするカフェバーを開拓しようとは前から考えていたのだ。 連休中は…
シュールリアリズム、マジックリアリズムなのかも不明な、チェコ文学作品の英訳。 著者の名はどう読めばいいのか。まず、そこでつまづく。 本書と私の出会いは、Amazon.comの2009年SF・FTトップ10だった。一体だれが選んでいるのやら、Amazonは毎年、よ…
チャンドラー、カフカ、ブルーノ・シュルツらに捧げられた、著者初の異色警察小説。 The City & The City作者: China Mieville出版社/メーカー: Del Rey発売日: 2009/05/26メディア: ハードカバー クリック: 9回この商品を含むブログ (2件) を見る ※ネタバレ…
アメリカの妙な文学好き界隈で話題になっている本。 ヴィクター・ラヴェイルは1972年生。名門コーネル大学およびコロンビア大学を卒業。2003年、ペン/フォークナー賞最終候補。NY出身で父親はアイリッシュ系アメリカ人、母親はウガンダ人である。 ラヴェイ…
半分までざっと読んだ。イギリス人を中心とした作家たちが、科学者たちから専門知識を得てSF短篇を書き下ろすという企画のアンソロジーである。タイトルはライマンがお気に入りの短篇、ジョアンナ・ラス「変革のとき」からもらったそうだ。 ジェフ・ライマ…
注意:メモが適当なので、情報ソースとして使用しないでください。聞き違いがあることを前提として、話半分に読んでください。1時間ほどで起こした適当なもので恥ずかしいため、数日中には消すつもりです。せりふは一字一句同じではなく、意味の通じるよう…
今月22日が公式発売日ではあるが、だいぶ前(夏?)から版元のサイトなどで先行発売されていた模様。 一言で説明すれば英国版『サイエンス・イマジネーション 科学とSFの最前線、そして未来へ』(NTT出版)である。これに尽きる。作家と科学者を語らわ…
読んでこちらに感想を書きました→http://d.hatena.ne.jp/knigi/20100217 よって読む前に書いた粗筋は削除。 藤原書店は出してくれそうもないし(偏見?)重訳を避けるなら「お客様の中にトルコ語ができるミステリ者は(略)」と請うしかない。The Kiss Murde…
英国Comma Press*1の本を2冊、Book Depositoryでポチってみた。 2008年度シャーリイ・ジャクスン賞アンソロジー部門受賞作品。Uncannyは「不気味なもの」の意で、フロイトの論で使われた言葉heimlichの英訳だそう。精巧な人形に対する違和感を表す「不気味…
今年は全然読書がはかどらなかったので、年末までに巻き返したい。反省してブログタイトルを変えてみた。去年のベスト集成系のアンソロジーを積んだまま来年を迎えるのは避けたいところ。いっそ、好きな作家だけつまみ読みしてしまおうか。意味がわからない…