マーガレット・アトウッド“Lusus Naturae”

 これはほんの数ページの作品なのに、モンスター性というものの旨みが凝縮されている。謎の奇病なのか、ある女性の肌は毛深くなり、目は黄色に、爪は真紅に。ついに牙まで生えてしまう。彼女の口から自身の深い孤独が語られるだけの物語と言ってしまえばそれまでだが、どうにも共感させられる。怖い話かというとまったく怖くない。こういう孤独を経験することを想像すれば怖いが。ゴスである、異形であることを突き詰めていくと、原型としてこういう話が現れるんじゃないだろうか。ホラーの枠組みを利用した文学作品。
 *マイケル・シェイボンMcSweeney's Enchanted Chamber of Astonishing Stories (2004)に収録。いわゆるジャンルフィクションと一般文学の境界線を漂う作家たちが、パルプっぽい短篇を自由に書いたような本。