SF

中国のSF翻訳事情まとめ(09'版)

中国の翻訳SF業界がここ1年間で劇的に変動した。大きな出来事は4つ。 1.賞ができた。ヒューゴーや星雲にあたる「星空賞」が。しかも翻訳や英米SF紹介をやっている人たちが中核にいるので、はなから翻訳小説部門がある。 2.月刊ウェブジン『新幻界…

シェリー・プリースト“Boneshaker”(2009, Tor)

SF・FT界で、09年もっとも脚光を浴びた小説といっても差し支えないだろう。スコット・ウェスターフェルドが表紙に寄せた言葉は、 軽快な調子と壮大さを併せ持ち、すばらしく書きこまれたスチームパンク・ゾンビ・飛行艇アドベンチャー。 である。これで…

本年度ネビュラ賞ショートストーリー部門

ネットで公開されているもののみ、今夜ざっと読了。もう完全に内容を解説しているので、ネタバレを気にしない人のみご覧ください。すごい適当なレビュー。

ウラジーミル・ソローキン『青脂』(早稲田文学)

3分の1*1のみが早稲田文学3号に訳載された、伝説の珍作である。せっかくなので紹介記事を書いてみた。ネタバレなし。 時は21世紀も後半。永久機関のような炉に必要な20キログラムの『青脂』を採るため、遺伝子研-18に科学者と軍人が集められる。語り手…

太朗想史郎『トギオ』(2010, 宝島社)

【どんな本?】 第8回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞したピカレスクSF。 『快楽的・TOGIO・生存権』を受賞時には『東暁記』に改題されて発表され、発売時にはさらに『トギオ』に改題されたようだ。帯には「ブレードランナー」の独創的近未来…

ジェフ・ライマン編“When It Changed”(Comma Press) そのいち

半分までざっと読んだ。イギリス人を中心とした作家たちが、科学者たちから専門知識を得てSF短篇を書き下ろすという企画のアンソロジーである。タイトルはライマンがお気に入りの短篇、ジョアンナ・ラス「変革のとき」からもらったそうだ。 ジェフ・ライマ…

「大森望のSF漫談」 VOL. 3 世界はこうして円城塔を発見した!

注意:メモが適当なので、情報ソースとして使用しないでください。聞き違いがあることを前提として、話半分に読んでください。1時間ほどで起こした適当なもので恥ずかしいため、数日中には消すつもりです。せりふは一字一句同じではなく、意味の通じるよう…

ジェフ・ライマン編 “When It Changed Science Into Fiction”

今月22日が公式発売日ではあるが、だいぶ前(夏?)から版元のサイトなどで先行発売されていた模様。 一言で説明すれば英国版『サイエンス・イマジネーション 科学とSFの最前線、そして未来へ』(NTT出版)である。これに尽きる。作家と科学者を語らわ…

マイクル・ビショップ編“A Cross of Centuries: Twenty-five Imaginative Tales About the Christ”

作家がかぶっているアンソロジーといえばこちら。マイクル・ビショップが、ひたすらキリスト教に関係した好みの短篇を集めた本。出版社がもう倒産してるようなのだが刷った割によほど売れなかったのか、まだ余裕で購入できてしまう。 かたやオスカー・ワイル…

ジェイムズ・パトリック・ケリー&ジョン・ケッセル編“The Secret History of Science Fiction”

10月1日に出る、1970〜2007年に発表された短篇から編まれたSF傑作選。何この文学系SF好きホイホイというか、奇妙な英文学好きホイホイ。「翻訳作品集成」様とグーグル先生を頼りに収録作リストを作ってみた。発表年代順に並んでる模様。他に訳されてるも…

ジョージ・ソーンダーズ 岸本佐知子訳「シュワルツさんのために」(群像09年10月号)

〈変愛小説集〉第2期の9作目には、2002年に短編集『パストラリア』*1(角川書店, 2002)が邦訳されたジョージ・ソーンダーズが登場だ。浅倉久志氏による翻訳があるこの作家は、私の記憶が確かであれば、都甲幸治氏がプッシュする一人でもあるはずだ。掲載…

ルー・アンダース編“Sideways In Crime”(Solaris, 2008)

Sideways In Crime作者: Lou Anders出版社/メーカー: Solaris発売日: 2008/06/17メディア: ペーパーバック クリック: 6回この商品を含むブログ (3件) を見る 昨年刊行された、改変歴史世界を舞台にしたミステリ限定アンソロジー。たとえば、中国人がアステカ…